自転車の旅に出る理由。それはいたってシンプルなものである。
47歳という人生の折り返し地点を迎えた今、相応にさまざまな身体的変化も実感するようになり、同時に、人生がいかに短く儚いものかと気づいてしまった。これからの人生をどのように充実させ、幸福度を最大化するかを真剣に考えるようになった。
これまでの自分を振り返り、どんな人間なのかを理解し、受け入れ、そしてどうすれば「いい人生だった!」とさいごに胸を張って言えるのかを深く考えた。その過程で気づいたのは、やらなかったことへの後悔が自分を縛り付け、充実から遠ざけているというということである。
「やらない後悔」こそが、自分にとって充実した人生の最大の障害であると悟ったのだ。
ちいさな例を挙げる。好きな町である十日町へ行くたび、僕は「ここに自転車で来たら最高だろうな」と思う。もともと自転車でラーメンを食べにいくのは趣味のひとつでもあるが、十日町まで行くのはなかなか大変だ。そして、忙しいとか時間がないとかいうもっともらしい理由をつけて結局一度も行ったことがない。
なぜ、最高だとわかっているのに行かないのか。そして、なぜ十日町へ行くたびに「いつか来たいな」と想いを馳せるだけの、充実からはほど遠い日々を続けてしまうのか。
ひとつは自分の心の中の抑圧勢力。もっともらしい理由でやらないことを正当化する存在だ。そしてこの抑圧勢力を弱体化させる方法はただひとつ、「それでも行動する」ということ。そう、今更にして気づいたのである。また、今更だと思うからこそ、この先の人生で最も若い「今」行動するべきだ。
新潟県一周自転車の旅とは、そんな無用な長物である「やらない後悔」をひとつひとつ消していく作業の、重要な第一歩である。
