2024.6.7 上越市滞在最終日は、新潟の海沿いを南下し糸魚川市へ。
上越から糸魚川へは、「久比岐自転車道」なる専用の道路がある。かつての旧国鉄北陸本線の線路跡地を利用して整備されたもので、美しい自然景観や地域の歴史・文化を楽しみながらサイクリングを楽しむことができる、全長24kmの自転車道である。
久比岐自転車道のスタート地点に到着。と言っても宿からすでに15km走ってきている。久比岐自転車道は24km。2/3に相当する距離をすでに走ってしまっているため、よし、走るぞ!という気持ちとはちょっと違う気がする。
今日は糸魚川まで一気に行くと決めていた。しかし結局、場所場所で立ち止まってしまう。せっかく来たのだから残さねば、という思いに駆られるのだ。その割に、スタート地点の看板は撮り忘れているのをどう説明すればいいのだろう。

この久比岐自転車道は、ずっと一本道が続いているわけではなく、ときには山の方に入ったり、ときには車道の右側に移動したり、なかなかに迷いがちなルートが設定されているのだ。
青いラインで誘導されているのでほとんどの場合は問題ないのだが、僕はさっそく道を間違え、こともあろうにあたかも弥彦山スカイラインのような過酷な坂道を爆走してしまう。
今思えば、なぜすぐに気づかなかったのか。こんなポップでキッチュなイメージで周知されているサイクリングロードにこんな過酷な坂があるはずがないのだ。無事山を下り、気ままなサイクリングロードに再び合流する瞬間まで気づくことなく、愚直に、そして真摯に取り組んでいた自分を、もはや褒めてあげるしかない。
しかし、そんなものはまだ序曲に過ぎなかった。
途中、うみてらす名立という道の駅に寄り小休憩ののちさらに自転車道を進む。

また少し行くと、「トンネルの中にある駅 筒石駅」という看板を発見する。そう聞いたら見るしかない駅である。だってトンネルの中にある駅なんて見たことがないのだから。
しかし、この駅は自転車道からは大きく外れているうえに、800mの距離の上り坂を越えなければならい。
でも、もう行くしかない。トンネルの中にある駅の謎を明かしたい。
「←筒石駅」の看板が見えたとき、僕はこの旅一番の雄叫びを、おそらく上げていた。過酷だった。

なんだろう。この辺から自分の感情が謎に揺さぶられ始めていた気がする。この駅への訪問が自分に及ぼした影響は大きかったように感じる。
ネタバレになるが、この駅の中にはそこが見えないほど長い階段があり、それを下った先にホームがある。もちろん僕は躊躇なく下った。そのために来たのだから。
中の様子は、動画にてご覧いただきたいが、道中やホームはあたかもドラマのワンシーンのようだ。こんなときこそドラマティックという言葉を使ってみたい。

ご存知かと思うが、下るは上るとセットである。つまり、下ったら上らねばならない。
外に出て、駅のお掃除のお仕事をされていたお母さんと数分お話をした。
「300段もあるんですよ。大変だったね。でも若いから大丈夫でしょう」
実は僕はこのとき、階段がちょうど300段くらいであることを知っていた。なぜか。疲労を紛らわすため階段を数えながら登ってきたから。
「疲れました(47)」
若くない、とつい口をつきそうになったが言わなかった。でも実際は、若くはない。
そして驚くべきことに、このお母さんはなんとこの300段の階段を下まで掃除されているというのだ。ふらっと自転車で来ただけの僕に気さくに話してくださったこのお母さんがむしろ鉄人だった。僕は頭が上がらなかった。

久比岐自転車道を進む。美しい景色。たまに海からの風に乗ってくる潮の香りを感じると、それだけでHPが30くらい回復した感覚になる。

初日からかれこれ200km以上走っているが、途中、ゾーンに入ったかのように力が湧いてきた。思わず全力で漕ごうと思った瞬間、こういうときこそ気持ちを引き締めなければならないと気づかせていただいた。
あの地獄坂と階段を登った直後に、体が疲労していないはずがない。ただ、感じていないだけだ。無理をしてケガをしては、ここから先に出会うかもしれないさまざまな体験を棒に振ることになる。




道の駅マリンドーム能生に到着。相変わらず写真は撮り忘れている。いろんな方に、カニを食えと言われてきたので、カニを食う。
1杯購入。「おまけしといたよ!」と、カニが2杯になっていた。
裏には美しい海を眺められる広場がある。そこでいただくことにした。もはやこの辺はカニのことしか考えていない。
途中で一切写真を撮っていないことに気づき、とってつけたように撮影。すでに2杯目の足3-4本いったあとのことだ。

カニを連続2杯食べる。ここに来なければ一生体験することはなかったことのひとつだ。そもそも、2杯食べようという発想をしたことがない。
カニに予定外の時間を費やしてしまった。なんせ2杯。ということで、ここからはノンストップで行こう!
って言いつつすぐ止まる。なにせ素敵な景色が多すぎる。

糸魚川市街が近づいてきた。



心に決めていた四川料理日出人(ひでと)さんへ。本格的な四川料理が味わえるお店だ。

過酷なロングライドだろうがなんだろうが、濃厚なラーメンでも辛いラーメンでも食べる。なぜなら、特に何も考えていないからだ。うまいものはうまい。

帰り道は、能生にあるカフェhugさんに立ち寄る。ここも教えていただいたお店だ。好物のレモネードと、メニューをみて心を惹かれた宇治金時のかき氷をいただく。


店員さんと束の間のラーメン談義をし、上越へ。



15:30頃直江津へ戻る。予定より1時間半遅れてしまった。
ネットカフェへ駆け込み、仮眠をとる。なんせ昨日の睡眠時間は2時間。だんだん勝手がわかって来たから、今後は睡眠時間を確保するためもう少し効率的に行動しようと思う。
上越滞在最後のラーメンはおばちゃんラーメン。期待感しかない。まさに地域に根付いた地元の愛され食堂そのものだ。

フォロワーさんに教えていただいた塩レモンラーメンを、食い気味で注文。
レモンの酸味が疲れた身体に染み渡る。

店名になっているおばちゃんと思われる方と、娘さんだろうか。おふたりと楽しくお話をさせていただいた。
帰り際に、おばちゃんから栄養ドリンクをいただく。いちばん嬉しい差し入れのひとつだ。
「30分後に効いてくるから登る30分前に飲むんだよ」
その後、お渡しした一周中カードを飾ってくださり、Instagramのストーリーに掲載してくださっていた。

夜、コインランドリーでInstagramやThreadsを更新しながら、いろいろな感情が交錯しはじめてきた。
そのとき、ちょうど妻から電話が来た。この懐かしの上越で、もう来ることもないかもしれないコインラインドリーで、涙が止まらなくなった。
